創業前、創業直後の融資制度は主に2つ
1. 日本政策金融公庫 新創業融資制度
(1)日本政策金融公庫とは
日本政策金融公庫は、財務省所管の特殊会社(株式会社)で、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、中小企業や小規模事業者、個人などの国民生活の向上に寄与することを目的とする政策金融機関です
(2)新創業融資制度の創業者にとってのメリット
①低金利
これまで融資支援をしてきた経験から、後にご紹介する県や市の制度融資よりも、金融費用が安い。金融費用とは支払利息のほか、信用保証料(後述)などの借入に伴うコスのことです
②手続が簡易
信用保証制度(これも後述)とは無関係に融資が受けられるため、比較的手続が簡易で、申込みから融資実行までの期間も短いのも大きなメリットです
③無担保・無保証人、代表者連帯保証なし、が大きなメリット!
新創業融資制度や中小企業経営力強化資金などの特定の融資制度では、原則、無担保・無保証人の融資制度です。これは他の融資制度でもあるのですが、代表者個人に責任が及ばない制度はこれだけです。
この場合、法人としての融資が必須です。つまり、仮に法人をやむを得なく解散する場合、債務者が消滅します。その結果、法人の代表者に債務が及ばないと言うことです。一歩間違うとモラルハザードが生じてしまいますが、実際に存在する制度です。
なお、法人の場合、代表者が連帯保証人となることも可能で、その場合は利率が0.1%低減されます。以上から、大きなメリットがあります。
(3)新創業融資制度の注意点
①対象者
●創業前もしくは創業後2期の決算を終えていない方が対象です。よって3期目の方は新創業融資制度は利用できず、通常の融資となりますので、代表者連帯保証付の融資になります。ただし、後述する中小企業経営力強化資金での融資の場合は、代表者連帯保証無しでの融資が可能です(ハードルがあります)
●現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める創業者、もしくは、これから始める事業の経験が6年以上ある創業者が対象です。つまり、未経験者や経験不足の方には融資はできないという立場です。当たり前ですが、未経験者や経験不足の方は事業成功確率が低いからです。
サラリーマンを退職して、好きだったカフェを開業したいという創業者が少なくありませんが、この場合はほとんどNGです。
●創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を持っている創業者と公庫のサイトには記載がありますが、実際には3分の1以上の自己資金を持っているべきです。
以前、資金総額の20分の1以下しか自己資金を持っていないのに、補助金や民間金融機関との協調融資(多数の金融機関から融資を得ること)などの手法によって数千万円の資金調達支援をして成功したことがありますが、この場合は、事業の確実性、収益性、成長性に圧倒的な説得力があったという稀なケースです。通常の創業事業であれば、総額の半分ぐらいの自己資金があったほうが安全ですし、融資実行の確率もアップします。
②税金や公共料金などの滞納がないこと
当たり前ですが、滞納者には融資の申込みができません。納税は国民の義務ですから。また、縁起でもありませんが、仮に倒産したときに滞納していると、金融機関への返済よりも納税が優先されますし、不動産などの資産があっても国が先に差し押さえます。よって、滞納者には通常融資はできないと言うことです。
③法人でも個人でも、小規模事業者や小企業の場合、1つのサイフとして個人資産が影響する
住宅ローンの残金や個人の生活への影響など、仮に法人として融資を申請しても、個人と一体的に見られてしまいます。返済能力を確認しますので当然と言えば当然です
④創業前ということは事業実績がないので、事業計画書(ビジネスプラン)と人物像で判断される
とくに創業前や創業間もない場合、実績がありませんので、融資をしていいのかどうかの判断が難しいです。結局、その判断は、事業計画書と人物像を確認して、事業の実現可能性、収益性、競争優位性、持続性、成長性など多面的な判断で決定します。よって、事業計画書の作成が極めて重要になります。
事業計画書の中身が最も重要になります!
(4)新創業融資制度の手順
①ことkita.の高久にまずは相談(ことkita.入居メンバーのみ)
基本的に、事業計画書を作成いただきます(入居の際にも必要です)。その上で、事業計画書をもとにコンセプトや収益性、実現性、競争優位性などを確認させていただきます。また、新創業融資制度の基準内であるかどうかもチェックします
②資金の使途と自己資金、融資額の確認
資金の使途が明確になっていることは融資の申請時に必須となります。曖昧な使途への融資はあり得ないと思って間違いありません。とくに、設備投資については、回収不能なサンクコストになる可能性が高い場合、慎重に計画します。たとえば、小さく始めて大きく育てるという考え方です
次に、自己資金の額と融資額のバランスを確認します。前述のとおり、事業総額の3分の1程度の自己資金があるかどうかを確認します(事業によって割合は変わります)
③創業時と軌道に乗ったときの損益計算から返済能力を確認
当たり前ですが、返済能力がなければ借入は困難です。通常、創業融資や設備投資融資の返済原資は、キャッシュイン(現金流入)からキャッシュアウト(現金流出)を差し引いた、キャッシュです。つまり、しっかり利益をだして、キャッシュを生み出せるかどうかで決まります。その数値だけではなく、根拠や信憑性も確認しなければなりません。
④必要書類の作成(公庫様式の創業計画書と事業計画書)
ここまで検討・確認してきた内容を、何度かブラッシュアップをしながら計画書にまとめます。この段階までくれば1段落です。なお、法人で申請する場合は、法人登記が完了していることが必須となりますので、まだのかたは急いで法人登記を完了させましょう
⑤政策金融公庫の窓口相談(もしくは事前相談)
ことkita.高久がアポを取りますので、日程調整をして公庫に訪問します。このときは、公庫様式の創業計画書と事業計画書、借入申込書、代表印などを持参します。その上で、事業の内容を説明し、質問や疑問に応じます。これらのやりとりで感触を確かめながら、正式な借入申込書を提出し、面談の期日を決めます。本日の窓口相談はここまでです。ダメそうな場合は出直してくることになりますが、そのようなことがないように、前述の④までのプロセスに労力をかけることが必要になります。
⑥政策金融公庫との正式な面談
この時に、各必要書類のほか、日常生活で使用している通帳、免許証、納税証明書(源泉徴収票)などを持参します。
すでに事業をされてる方は、法人の場合は現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書(登記簿)、直近の決算書、直近の残高試算表、不動産賃貸をされている方は賃借契約書、すでに金融機関から借入を実行されている方は返済計画書、知的財産権などの書類などが必要になります。これだけたくさんあると大変ですし忘れそうですが、通常、持参していただくものは事前に提示されますのでご安心ください。
⑦事務所やお店などの法人や個人事業の実態調査
事業の実態確認に公庫の担当者などが現地調査を行います(当たり前ですが実態がないと融資はできませんので)
⑧融資実行
融資の最初の相談から融資実行まで数ヶ月、融資申請から早くて3週間で融資が実行されます。融資実行のタイミングを見て、いつ動けば良いのかの判断が重要です。
ことkita.では、入居メンバーに対して、運営者の高久の経験と実績、そしてすべてのノウハウを提供し、融資実現へと導きます
ただし、当たり前ですが、事業そのものに魅力がなかったり、実現性や収益性がなければ融資は困難になります。よって、最も重要なのは事業そのものということになります。つまり収益が得られる事業を計画することが最も大切ですので、その支援を中心にしてまいります。